製鉄業におけるカンラン岩の役割
製鉄業におけるカンラン岩の役割
製鉄主原料である鉄鉱石は高炉内で加熱され、還元され、溶かされて液相の鉄分と滓分とに分離される。此が高炉下部の出銑孔から取り出される。高炉下部出銑孔に繋がる大樋で比重差を利用し、液相の銑鉄とスラグ(滓)に分離される。
この銑鉄は脱炭、脱珪、脱硫、脱燐等の処理を経て製鋼工程で目的の鋼に精錬されることになる。スラグは水冷処理された物が水砕としてセメント原料に又大気中で放冷徐冷される物は路盤材等に余すところなく有効資源として活用されています。
高炉は向流型の反応容器に例えられています。炉下部から高温還元ガスを吹き上げ、一方、炉頂部からは主原料の鉄鉱石や石灰石に加え熱源で在り還元剤でもあるコークスを装入し下部から吹き上がる高温還元ガスによる熱交換と還元反応の進行により炉下部に至って溶融銑鉄と成りますが、此処までの過程で鉄鉱石中の不純物やコークス中の灰分等が所謂「滓」(スラグ)として溶融分離される事になります。此処で生じる「滓」スラグを効率良く分離し、高温還元ガスの通気抵抗を低く抑え、生成された溶けた鉄分とスラグの炉下部へのスムースな移動を可能にするハンドリングが高炉操業の重要ポイントとなっています。高炉内ではこの通気性・通液性を担保することが高炉操業の最重要テーマなのです。
その為には1500〜2000℃雰囲気での流動性が重要ファクターとなって居ますが、此を支配する成分がカンラン岩に含まれるMgOなのです。
スラグは銑鉄1トン当たり約0.28〜0.32トンと膨大な量が発生するわけで、このスラグの制御そのものが高炉操業の好不調を左右する大きな鍵でもあるのです。
人体に例えると、血液中に血栓が出来ると脳梗塞や心筋梗塞等の誘発に繋がり健康の維持が不可能となります。高炉内での通気・通液性の確保は円周バランスを加味した安定操業には不可欠で在り、かんらん岩の役割も極めて重要と言われるゆえんが此処にあります。
文:今野技術士事務所 今野乃光